6-2.アイのターボ化_11
(クランクシャフトのオイル穴の加工とラッピング処理)
■2019年9月
エンジン組み立てに向けて我が家の工具もずいぶん増えてきた。引出しを開けるたびに、”にま~”と顔が緩む。子供の頃にこういう風景にあこがれていたもんね。
エンジンOHの話に戻って、クランク周辺を組み上げる段階に入ってきた。しかしその前にやっておきたいことがある。クランクシャフトのラッピングである。ジャーナルやピン部は見た感じはきれいで問題はなさそうだけど、ラッピングしたいのだ。
まずは軽く試してみる。捨てるジーパンの縫い目の所から磨き用の帯を用意する。
クランクをしっかり固定できるように台座を作り、100均クレンザーを帯に塗って、ひたすら往復運動。5分くらいでぐったり。
どんな感じになっているかな~? と見比べると、確かに磨いた方はつやつやしている。写真ではわかりにくいが、反射して写っているカメラのレンズ部で違いがわかる。よしよし!いい感じだ。では本格的にラッピングやっていこう。
その前にオイル穴の加工もやってみたい。スバルのオイル穴がすごくかっこいいのだ。下写真はスバルのトヨタ86なのだが、細長いオイル穴にはとても惹かれる(ポルシェもこんな感じだったと思う)。
だからといって、同じ形状にするってのもだめなような気がする。一か所の形状変更は他のバランスも崩すかもしれない。そもそも86のジャーナル部はアイのと比較すると径が太く、幅が狭い。そういう理由もあってオイル穴は細長にするしかなかったのかもしれないしね。そこで自分なりにアイのオイル穴の加工を考えてみた。ジャーナルのオイル穴は、オイルが入っていく側なので、回転によりオイルが入りやすいように下図の赤ラインのような形状に加工する。内側のアールを滑らかにし、軸受け面の回転方向に楕円状に伸ばす。反対側はまん丸のまま。ここがスバルと違う所。ピン側はオイルを軸面に送り出す役目なので、回転方向の後端を丸から四角っぽい形状にし、また軸面に滑らかに繋がるようにする。こうした方が、軸受け面に幅広くオイル面を形成できるのではないか?という素人考えである。
加工前のジャーナルのオイル穴
ダイヤモンドリューターで削っていく。
ジャーナル面を傷つけないように気を付けてやる。
最後はドリルに耐水ペーパーを両面テープで巻いて、仕上げの磨き。そして手元がくるってジャーナル面を傷つける (T_T)/~~~
続けてピン側の加工。慎重にねぇ~。
摺動面進行方向の終端側を四角形状に加工する。
仕上げに耐水ペーパーで磨く。
ちょくちょく失敗しているけど、一応終了。
ここからはラッピング。クランクの軸部を目で見ると軸部に縦筋も気にならないレベルなので、研磨剤だけの仕上げでOKだと思っていたんだけど、撮った写真を見ると結構縦筋が目立つ。ということでまずは#2000の耐水ペーパーで磨く。クランクを台座に置き、左手でクランクを回し右手で耐水ペーパーを引っ張る。3分くらい回すと結構きれいになった。この方法はいいかも。クランクの端にハンドルをつけて、妻を口車に乗せて廻してもらえば意外といけるかもしれない。でも研磨剤での磨き工程までは妻は手伝ってくれないだろう(^^;)
回すだけでいいんだから、と旋盤で回すことも検討してみる。軸端側を固定する方法を考えればなんとかなるかもしれない。
でもチャックで掴む幅がちょっと狭すぎるなぁ。
そこで満を持して四つ爪チャックの投入だ。こいつは結構前に購入していたんだけど、今まで手付かずのまま放置していた。三つ爪は80mm径で四つ爪は100mm径です。
チャックベースは設計時に四つ爪チャックもつけられる用に作ったのだが、嵌め合い確認したところ、取り付け用の穴が小さすぎた(φ6)。四つ爪チャックの固定ボルトはM8なので、穴をΦ8に拡大するとちゃんと取り付いた。
これでクランクを掴める。回転中にクランクが外れたら大惨事なので、イザという時のために旋盤ベッド部に布を巻いておく。どうかそんな時が来ませんように (-m-)”。
画用紙で回転中心を型取り、軸端側も芯が合うように台座を製作&調整した。
木型で固定している軸端なんだけど、下写真の黒いところだけクランクと一体化しておらずくるくるまわるんだよね。構造的にここが回る必要性は感じない。きっと俺のために三菱が気を利かせて設計してくれたのかな(笑。
チャック側はダイヤルゲージで芯出ししようと思ったんだけど・・・、 カウンターウェイト部に邪魔されてダイヤルゲージがジャーナル軸に届かない。仕方がないので心眼で芯出しした。
これでクランクを回す準備が完了だ。まずはクランクの回転試験。チャック側での芯振れは0.5mm弱くらい。これくらいでいいとしよう。すぐ近くに窓ガラスがあるのでちょっと怖いけど、300rpmくらまでなら問題はなさそう。
まずはジャーナル部から。#2000の耐水ペーパーを帯状に切ってラッピングしていく。ものすごく楽ちんだ。1か所するのに1分くらいしかかからない。
ピン部もラッピング。ピン部はぐるぐる回るので腕をバネのように機能させればうまくいく。しかし旋盤を止める時などに目線を外すと、タイミングがずれてピン部で暴れて、「うわ~ぁぁぁ!」となってしまうこともしばしば。
最後は研磨剤だ。今まで100均のクレンザーを使っていたが、下準備にこれだけ手間をかけたのでもう少しいいものを使いたい。エンジンを磨いている人のブログには”青棒”という言葉がしばしば出てくる。何なのか知らなかったのだけど研磨剤の一種だよね。よし、俺も青棒デビューだ! と密林さんで検索してみたのだが、ちょっと金額的になぁ~、と購入は躊躇していた。そんな頃に妻が少し遠くにある大きいダイソーに行きたい、ということでお付き合いしたのだけど、そこで見つけましたよ。青棒 ! バッタモンでも”青棒”って書いているから俺にとっては青棒だ (*´з`) 。
そもそも使い方も知らなかった。この四角い物体で直接対象物を磨くのかと思ってた。消しゴム使うみたいに。でも商品のラベルにも一応使い方は書いている。なるほど! 布などに擦りつけて使うのね (^^;)。
それではやってみよう。なんからくらく研磨できていく。でも油断して帯がクランクに巻き付くと手まで巻き込まれるので注意が必要。帯が巻き込まれたらすぐに手を離せるように意識を集中して作業する。
ラッピング風景。回転数も300rpmくらいまで上げる。
ピン部はタイミングを合わせるのが難しいので200rpmくらい。タイミングを合わせて腕のしなりを使うと気持ちよくできる。
結構あっさりラッピングは終了した。準備作業に5時間、ラッピングは20分くらいだ。
ラッピング完了したクランクの記念撮影。
オイル穴周辺の拡大撮影。なかなかいけてる。でもリューターで傷つけた跡がすこし残っている。残念!
ジャーナル面のぴかぴか度合いを確認するため、雑誌の端切れを反射させてみた。きれいだ。比較のためラッピング前も同じ撮影しておけばよかった。
ちょっと構図は違うけど、カメラのレンズ部が写ったものの比較。ラッピング後の方はレンズ周辺の文字も読めそうだよね。
ジャーナル部のオイル穴周辺の加工のビフォーアフター。
ピン部のBefore/After。
これでクランクまわりの作業は完了だ。
スバルのみたいにもっと削りたいという気持ちもあったが、かなり遠慮気味に加工した。オイル穴の形状について自分なりの考えを記す(想像で書いているだけ)。
ジャーナル側のオイル穴は軸受けの回転角度が下側半分の時はメタル中央のくぼみがあるので、オイル供給ラインとつながる。その時はオイル圧でジャーナル側オイル穴を経由し、ピン側へオイルを供給する。回転角度が上側半分の時はメタルはくぼみは無いのでオイル供給ラインはふさがった状態になる。この時はピン側へオイルは供給されないことになる。でもその分オイル圧が高まり、ピストン裏へオイルを噴出するオイルジェット側のオイル圧がより高まりピストンの潤滑&冷却の仕事が増えるのだと思う。ジャーナルのオイル穴をあまり長くするとオイル供給ラインとつながっている時間(回転角度)が長くなるので、その分ピストンへのオイル供給が減るのだと思う。
ピン側のオイル穴では、オイルがより軸受け部に入っていく様な形状にすれば、ピン部の潤滑は良くなるが、その分ピストンなど他へのオイル供給量が下がってしまう。
オイルの供給量だけで考えたらこちらを上げればあちらが下がる、となるのは自然の考えだと思う。でもオイル穴の形状変更で同じ供給量でもよりうまく(均一に)軸受けにオイルがまわるようになればいいのに!、という願いを込めて今回の加工を行った。でもまあ、今回の作業の成果など検証できないんだけどね。要は気持ちだよね。注いだ愛情に比例して愛着は増すのだ!
次からは組み上げだ。