O型のまこさん

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趣味でいろいろ作った備忘録

5-2.旋盤がキター

5-2.旋盤がキター

■2015年11月
    ”自宅で旋盤を使う”というのはずいぶん昔からの夢であった。父親が今で言うDIY派だったので、私も小学生の頃から電動工具は使っていた。隣近所との距離感も少しはあったので騒音問題も(多少は)OKであった。しかしマンション暮らしを始めてから、家でそういう工作はもうできそうもないとあきらめていたのだが、ボール盤を入手してちょこちょこ使っていくうちに、「あれ?結構静かだよね。」と考えが少しずつ変わっていった。
 実家で使っていたグラインダーや電動ノコギリはそうとう騒音がしたが、ボール盤はそれに比べればはるかに静かなのである。前者は交流整流子モータ、後者が誘導モータというのが理由だろうか?。ボール盤を使っているうちに、心の中に眠っていた”旋盤”という思いが少しずつ成長していった。ベランダ天文所を始めてからは望遠鏡の接眼部のちょっとした円管がほしい!となった時に「旋盤があれば!」と思いながら手作業で精度の低い加工をしていた。
 ※後日追記:”旋盤を我が家に!”という流れは、上記以外にもB君との会話が大きかった。B君は妹の旦那なのだが実家で親族が集まって食事している時に、B君が「会社で廃棄する旋盤があったので、北海道帰省時に持って帰って親父にあげた。」との話題が出た。B君の父親も相当なDIY派なのだが、”廃棄する旋盤をプレゼント” というパワーワードに私の心も撃ち抜かれた感じだった。私もぜひ旋盤を持ちたいと強く思ったのだ。
 ヤフオクでちょこちょこ旋盤を探すのだが、ちょっと金額的に手が・・・。ボール盤をフライス代わりエンドミルをつけて削ったりもしていたが、ボール盤ではちょっと剛性がなさすぎ。せめて剛性のある軸と旋盤チャックだけでもあれば。いっそのこと旋盤を自作しようか、など思って”ジャンク”、”旋盤”のキーワードでヤフオクを覗く日々であった。
 そしてその戦いの日はやってきた。私の要求仕様を最低限満たしていそうな商品が出ていた。よし、目標は1.2諭吉。終了の30分前までは私はトップランナーであった。これはもしかして!と終了タイマーを食い入るように見つめていると、一人の強力なライバルが現れた。私の予算上限を超える入札をしてくる。一回だけなら対抗してやろう、とポチリ。相手の反撃はすぐには来ない。”これは本当にもしかして!”と気持ちが高まってくるタイミングで、そいつはまた私を上回った。最後は「この機会はもしかして一生に一度の”逃してはならない”チャンスなのでは?」と意味のわからない焦燥感に襲われ入札ボタンを連打してしまい、気がついたら落札していた。はっきり言おう!金額上限を決めている時は終了間際には戦場に出ない。遠方射撃だけにして、地上戦はしてはいけない、ということだ。
 などという思いをして入手した旋盤がこちら。結局1.8諭吉。

結構錆びているが、主要部分は大丈夫そう。主軸はガリガリと渋いが一応は回転する。

 よく見ると”手作業によって作られた感”がはんぱない作りだ。台座部分など鉄板を切断した痕跡がありありと残っている。切断跡を見ながら、製作した職人さんに思いを馳せる。いつ頃のものだろう?。おそらく下町の工場で作られ、使われていたのだろう。

まずはお家を作ってやらないと。梱包されていたダンボール箱で居場所を作ってやった。

分解して各部のクリーニングを行う。チャックは4つ爪なのだが、一つのネジ部が折れている。まあ修理の楽しみが出てくるというものだ。

分解を始めて始めの難関はベアリング抜き。ハンマーで叩き出せば抜けそうだったが、ここは慎重に事を運ぶ。ネットでベアリングプーラーを2漱石で購入した。いざトライ!と、取り掛かったが・・・

ベアリングを掴めませんよ、あなた。
まあ、この事態ははじめから想定していた。そこで下記のように加工。

これでベアリングにわずかだが引っかかる。ただ、ひっかかりが少しなので、左右から締めつけてやらないとベアリングを掴めない。ボルト・ナットで締める治具を作ろうと思っていたのだが、下の方法で試したらあっさりと抜けた。

だいたい分解できたところで、塗装にかかる。まずは台座。ヤスリでさびを落とす。

そして主軸台座。さびを落とし、金ヤスリで加工跡を削り、美しく仕上げる。

塗装は黒にした(家に余っていたスプレー缶で)。

美しさを取り戻してきた。
次はプーリーのさびを落とすのだが、どうせなら回転させてヤスリを当てたい。早速モーターをヤフオクる。ボール盤のモーターと同じくらいでいいだろうと、100Wのものを落札した。しかし届いたモーターは大きかった。同じ100W でもサイズって同じではないんだねぇ。知らんかったわ。

 
 まわしてみると問題なく回る。ただ始動、停止時に金属がこすれるような音がする。後日モータ後端を分解してみると、機械式過回転防止装置っぽいものがついていた。こいつの音のようだ(さらに後日、始動時の金属音は始動用コンデンサの切り離し機構の動作音と判明)。  
 しかしボール盤のモーターよりずいぶん迫力ある回り方をする。慣性モーメントが大きいからか?同じ出力、回転数なんだからトルクも同じだよねぇ・・・、とボール盤の仕様を見てみると違った!ボール盤のは250Wって書いている。ホンマかー?届いたモーター(100W)の2/3くらいのサイズなのに250W?両方ともただの誘導モーターに見えるんだが、なぜだ!?
 気を取り直して、せっかくモーターが回るんだからプーリーのさび落とし。モーターを回して布やすりを当てるだけでぴかぴか。

続いて旋盤側のプーリーのさびも落とす。

回転してくれるってありがたい。すぐにさびが落ちる。

 さて、今後主軸の分解を頻繁に行うので、フックレンチがほしい。初めての分解の時はレンチではさんで回したがけっこう傷がついた。今回せっかくぴかぴかにしたので、もう傷をつけたくないんだよね。でもこのためだけにフックレンチを2個買うのももったいない。ホームセンターをぶらぶらして、よさげなものを発見。

これに穴を空けてタップを切り、ねじを取り付ければ、フックレンチの替わりになるだろう。

 
うまくできた。これで主軸の分解は簡単にできる。
次に主軸のすべり軸受けのオイルカップを作る。まずはM8のねじの中心に穴を空け、先端形状を加工する。ボール盤に取り付けて加工を実施。

そしてフィルムケースに取り付けてオイルカップのできあがり。

主軸ベアリング部に取り付ける。また軸受け下部にオイルガイドを取り付ける。

 すべり軸受けがどれくらいのオイルを消費するのかわからないが、オイルガイドの下にオイル受けを置いておけば、そのオイルをまたオイルカップに入れなおせばオイルの無駄な消費は防げるだろう。
  試しに回してみたがうまく回っている。オイル消費は30分ほどでオイルカップ分を消費しそうな感じ。

 さて、ここからはちまちまと手作業でのさび落とし。まずはチャックまわりから。とにかくちまちま、ちまちまとがんばる。400番の耐水ペーパーで夜な夜な磨く。でも一日30分くらいが限界。指先が痛くなって終了。まあ、風呂に入る前のいい気分転換になる。

手作業部分を終えると、主軸にチャックをつけてモーターでまわしながらのらくちんさび落とし。あまりの楽さと、その美しさに途中からさび落としを通り越して磨き作業になった。

そうそう、ベアリングがモノタロウから届いた。ベアリングなんて生まれて初めて買った。

主軸への取り付だが、以前から気になっていたベアリング受けとベアリングのゆるゆる。このまま組み付けも気持ち悪いので、アルミホイルを挟んだ。アルミホイルの厚さは11μmだ。でもまだ多少ゆるい感じがする。将来旋盤が本格稼動を始めたら、このベアリング受けも作り直してみよう。

チャック周辺のネジも磨いた。これは手作業でひたすらちまちま・・・・。
おかげでぴっかぴか。・・・美しい。

チャックのさび落とし完了。

チャックの締め付けネジが一本折れていたのも作った。上側のが作ったやつで、下側が損傷していなかった方。

次は往復台を磨く。

そしてクロススライド、トップスライド、刃物台と磨き、さび落とし完了!。

おお・・・、美しい!。
こいつが切削を開始するのはいつになるのだろうか?
土台作って、モーターをつければとりあえず切削可能だが、送り軸をなんとかしないといけない。とりあえずさび落としは終了。