O型のまこさん

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趣味でいろいろ作った備忘録

4-3.EOSのシャッターレス改造

4-3.EOSのシャッターレス改造
■2017年1月

  天体撮影時、精度の高い撮影をするためには不要な外乱はできるだけ避けなければならない。その点を突き詰めていけば、一眼レフのミラーアップ動作や、はたまたシャッター動作をも、漆黒の静寂世界を捉えるのにはパフォーマンス低下の要因たりえる。その思想を突き詰めるため、我がEOS kissDは大きなチャレンジに打って出た。ミラーアップを行わずシャッター動作も行わないショックレスな究極の天体カメラの実現を目指す。そう!それこそが私が目指す究極の・・・・・っうぇ! ごほっ!  ごほ!ホ。
  うん・・・(-_-;)。うそです。そんな大層な信念は特に持っていません。いやこころの片隅にはあるけど、我が天文台(ベランダ)で稼動している望遠鏡のレベルでは他要因のレベルが低くシャッターショックなど問題になることはありません。本当の理由は深夜のベランダでシャッター音を轟かすことへの後ろめたさのため。深夜にパシャパシャ撮影音を鳴らしていたらそのうちクレームが来て我が天文台は閉館という事態も考えられるので(笑。
  そして苦節1年ようやく完成。何度もカメラを分解しあまりの部品の細かさに嫌気がさして何度も頓挫。結局EOS kiss Digitalを3台所有するまでになり、稼動用に1つ確保し、1つは途中で壊し、ようやく動作する1台を完成させた。まあ3台と言っても合計金額は一葉さん以下なのだが(笑。それぐらいの金額でなければ怖くていじれませんよねぇ。
  まずはカメラの基板を外した写真。
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分解組み立ての手間を減らすため、天体撮影のための必要最低限の機能を確認する。上の写真に示す測距センサーやファインダー内表示2のコネクタは接続しなくても動作する。思い切って不必要な部品もはずす。まずはストロボ用のコンデンサ
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測距センサーもとりはずす。
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カメラ側面のUSBコネクタやシャッタープラグ部からの漏光も気になっていたので、バスコークでふさぐ。
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コネクタ部からみるとこんな感じ。
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次にシャッター機構を見てみる。
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シャッター機構はまずシャッター巻上げモータ(左下)でカムギヤ(中央)を駆動する。カムギヤの裏側(下写真参考)には巻き上げ用のカムがあり、このカムでアームを押し上げる。アームはミラーとリンク機構で繋がっており、ミラーを下げる。同時にシャッターを巻き上げる。これが撮影前、または撮影終了時のポジションとなる。カムの回転角度は接点で検出されており、①撮影前ポジション、②撮影中ポジション、③巻き上げ途中の3ポジションを検知する。
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ミラー、シャッターともにバネ力で動作する。ミラーは撮影時にカムが外れることでバネ力でミラーアップし、シャッターは撮影前電磁石でホールドし、撮影時に電磁石リリースで動作する。ちょっと話がずれるが、カムギヤの下側に配置されている四角い2つのセンサみたいなのはなんなんだろう。初めはカムギヤの動きを非接触で検知するセンサかと思ったが、カムギヤ位置は内部の接点で検知しているし、このセンサみたいなので非接触検知できるとも思えない。カメラ内部の温度や湿度を測っているのか?そうとも見えないし・・・謎だ。思い切って切り離したいが動かなくなったらいやだし。※後日談:このセンサを取り外しても、マニュアルモードでは撮影できた。
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さてシャッターの動作について細かく見ていく。シャッターは下写真のように上下に2つの扉が配置されている。シャッターを開く動作と閉じる動作に対応する。
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シャッター羽は羽で動作し、動作前に電磁石でホールドしている。そしてシャッター動作を確認するための接点がある。
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シャッター動作の動きを順番に見ていく。まず撮影前は下側のシャッターは開いた上体で、上側のシャッターが閉じた状態。
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そして撮影時は上側のシャッターの電磁石がリリースされ、バネ力で一気にシャッターが開く。
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撮影終了時、下側のシャッターをホールドしている電磁石がリリースされ下側のシャッターが閉じる。これが一連の動作となる。
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この一連の動作で想定どおりに接点がON/OFFすれば正常動作となるが、そうでなければerr99が出る(シャッター周りの異常)。この動きをリレーを使って模擬してやればいいのだ。今後の分解組み立てをスムースにできるよう不要部品をできるだけはずしておく。当初下写真の”閉”シャッター接点用の配線(青色ツイスト)はフラッシュ部に繋がっているため外部フラッシュの接点として機能していると思い、接続していなかった。そして延々と動作確認をしたのだがerr99でだめ。よくよく見たら外部フラッシュへも繋がっているが、さらにナイロンコネクタでメイン基板にも繋がっていた。ようするにインターロック要因だったのだ。こいつを突き止めるのにもっとも(無駄)時間を費やした。
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シャッター部のへの接続は下図となる。
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シャッターレス化改造にあたりシャッター部は取り外し、接点の動作を模擬するリレーを組み込むことでerr99(シャッターまわりのインターロック)を回避する。使用するリレーは2つ。5V用(EOSの基板は3.3Vだが問題ない)の小さいリレーを下写真のように接続する。本来はシャッター制御用電磁石を動作させていた回路でリレーを動作させる。また”シャッター開”状態を外部から見えるLEDも接続する。
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ナイロン基板へははんだづけし、エポキシぱてで補強した。初めは動作がよくわからなかったのであちこちにはんだづけしており、見た目汚い。
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リレーを接続した状況。
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”シャッター開”確認用のLEDは下面に取り付け。
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一連の動作の確証を得るためにシャッター動作のタイミングを計測した。使うロガーは手作り品で3chしかないため、カム位置の2点と”閉シャッター”の電磁石の出力を計測した。計測点は下写真の通り。
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計測結果のログを下記に示す。
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シャッターバルブ時間は0.3secに設定している。巻き上げ時間は0.15sec程である。
このモータ動作とカム位置を模擬する仕組みを作ればモーターも取り外すこともできそうだが、まあ余裕が出来たら考えよう。
※追伸 シャッター機構を外せば少しは電池持ちが長くなるかなとも期待したがそれほどでもなかった。シャッターを巻き上げるモータ仕事より、CMOSセンサで消費する電力のほうがはるかに大きいのだろう。

さて、実際際の動作を見てみる。右は従来機で左がシャッターレスEOS。


シャッター音は劇的に小さくなり、夜間では5mも離れたら音は聞こえない。よーしよし。とりあえず写真を撮ってみる。
夜に部屋の中でパシリ。あれ?なんか上側が暗い。

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蛍光灯があたりにくい場所だから暗く写るの?今までこんなことなかったよな。じゃあ、カメラの上下をひっくり返してパシリ。
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こんどは部屋の下側が暗くなった。つまりカメラから見た上側が暗く写る。
なぜ~?(涙。  おそらくCMOSセンサの露出開始が全画面同時でないことに起因するのかな。この場合は画面下側(センサ上側)から露出が始まるのだろう。このセンサ応答の問題が解決されてから出たのがミラーレスなのだろう(たぶん)。
  また、シャッターは1/20以上早いシャッターでは同じように写る。つまり外部シャッタがないため、CMOSセンサの応答速度だけで決定するシャッター速度は1/20くらいが限界のようだ。まあ長時間露光すればあまり問題ないだろうと思ったのだが。。。
ひとつ問題がでましたよ。フラット撮影時に。
  フラット撮影は薄明るい状態で撮影するので、1/10~数秒の露出となるのだが、この数秒ではカメラの上側が暗く写ってしまい、まったくフラットにならない。解決するには非常に暗い対象をフラットにするしかない。薄暗いLEDでフラット用のカバーを作ろうとか、いろいろ考えた。で、ひとつの方向として、星空を撮影し星部分を削除する形でフラットフレームを作れれば・・・と。考えるようになった。画像処理のソフトを作ろうと思ったきっかけである。
  まあ、それでもとりあえずシャッターレスEOSは完成である。これで周辺諸国からのシャッター音に対するクレームで、我が天文台閉鎖という最悪のシチュエーションは回避できそうだ(笑。  
※2016年12月以降の天体写真はこのシャッターレスEOSを使用している。