4-6.SP赤道儀入手&モータ取り付け加工
■2016年6月
ついに新赤道儀を購入した。NP赤道儀にはあれだけ愛情を注いだのに、あんなに尽くしたのに・・・。裏切ってしまった。「600mm望遠鏡+オートガイド」というところまではNP赤道儀で対応できたのだけど、目で見えない天体を撮るにはちょっと苦しかった。自動導入の実装を考えた場合、NP赤道儀の精度ではちょっと心もとなかった。何より時間を掛けてモータやらのハードウェアが完成して、いざ撮影!という段階になって”精度不足でした”となっては目も当てられない。とうことで半年ほど前からヤフオクで入札を繰り返していた。目標を一葉さんに設定して二十回以上入札したのだが、一葉さんでは無理でした。いい加減ヤフオクウォッチにも疲れてきたので、さらに漱石さん二人を動員してゲットしました。
赤道儀本体のみで、ウェイトシャフトなどもなし。手にしてみてまずその軽さに驚いた。NP赤道儀と比較すると一回り大きいのに重さはちょっと軽い。剛性・精度はNPより相当高そうである。一応重さを計ってみると3kg。
動きは全体的にスムーズで問題はなさそう。分解して中身を見てみたいが、それは余裕のあるときにしよう。簡単にはずれる赤緯のウォームギヤだけ見てみる。
さて、次はモーターの入手であるが、どれくらいのトルクのものを選んだらいいのか悩んでしまう。初号機では赤道儀の静止摩擦を適当に計測し、それに許容される重心偏差によるモーメントを加え、安全係数を適当に掛けてモータトルクを計算したのだが、二号機では自動導入時に、数百倍の速度で動かしたい。そうなると動摩擦が支配的になる(と思う)ので評価が難しそう。机上評価は断念し、ネットで同じような事をされている先人の情報を参考にさせて頂いた。ハイブリッドタイプのモータで42mm角のもので物色を開始。秋月電子のSM-42BYG011も候補に挙がったが、もう少しトルクのあるものがほしい。しかしそれ以上にものになるとちょっと値段が高価だ・・・。
ヤフオクで、200円とか300円で遊びで入札していたらいくつか落札してしまった。左下のは赤緯モータにいけそうだ。上の二つはちょっと大きすぎて赤道儀には取り付けられそうにない。右下のだけは漱石さん1.5人と高価であった。こいつを赤経用モータとする。
※後日オリジナルマインドさんで中古のモータを扱っているのを知った。これとかお手軽でぴったりだったのだが後の祭り。
【赤経モータ】
オリエンタルモーター 2相ステッピングモーター PK245-01B
・取付角寸法:42x42x47mm 、 軸径:Φ5mm、 質量:0.35kg
・結線方式:ユニポーラ6本リード線
・励磁最大静止トルク:0.32N・m
・ローター慣性モーメントJ:68×10-7kg・m2
・基本ステップ角度:1.8°、 定格電流:1.2A/相 、 電圧:8V(バイポーラ接続) 、 巻線抵抗:7.6Ω/相(バイポーラ接続)
・モーター部 質量:0.35kg
【赤緯モータ】
MOONS' 16HS4402-01N(詳細不明) ※A⇒おそらくMS16GS4O4070と同じなので、※A表記は左記モータ仕様
・取付角寸法:39x39x35mm、 軸径:Φ5mm、 質量:0.2kg
・結線方式:バイポーラ4本リード線
・励磁最大静止トルク:0.26N・m(※A)
・基本ステップ角度:1.8° 、 定格電流:1.5A/相(おそらく) 、 電圧:10V 、 巻線抵抗:7.6Ω/相
※A 定格電流:0.7A/相 電圧:5.88V、巻き線抵抗:8.4Ω/相
モータ取り付け金具をの加工を行う。
毎度のL型金具を購入し切っていく。
旋盤をフライス代わりにして端面を切削。この加工のために旋盤の改造も実施。
人生で初めてのフライス加工。といっても横方向にしか動かせないので、どうしても削れない箇所があり中央にバリが残った。
まあ特に精度が必要とされる部材でもないので、ヤスリで成形する。
次に駆動系である。当初は平ギヤで考えていたが、ネットでベルト駆動の話を知り、即採用。ベルト駆動だと設計自由度が高く、バックラッシも少ない。さらに静粛性に優れるといういいとこだらけ(本当かな?)。いろいろ探したがモノタロウさんが一番安そうだ。XL037形のCFタイプ(10歯)というのと、BFタイプ(19歯)というものを選定。一番安いやつね。あとベルトも。もう少しピッチの細かいのがほしかったが、価格(安さ)を優先した。
しばらくして商品が届く。思ったよりヘビーデューティー。しかもモーター側は穴が小さい!。あれ、選定ミス?と思って発注履歴を確認したら、取り付け穴はΦ4~8となっており、その後に"下穴径は最小径H7に仕上げています"と書いている。つまり穴を大きくする場合は自分で加工しろ!ということだ。困った。現状の工具では加工できない。ボール盤であけるという方法もあるが精度的に不安。やはり中断していた旋盤改造を急ぐことにする。なお上の写真はとめネジの加工後のもの。
その後しばらく旋盤改造に注力し、ドリルでの穴あけが可能となる。
次はウォーム軸側のプーリー。こいつは左右のフランジを"かしめ"なければならないが、我が工房(ベランダ)では近所迷惑もあり、ちょっと難しそう。打撃音はマンション全体に響くからねぇ。一日数回のポンチ打ちは自分ルールで許容してきたが、こいつは許容回数をはるかに超えている。さーどーする?こういう時は徒歩一分の屋外工房だ。堤防の岩場ね。最近津波に備えた高さ3mほどの防潮堤ができたので、その外側(海側)では人もほとんど居ないし、多少の打撃音を出しても民家には聞こえないだろう。で、その成果がこれ。
結構乱れてる(笑。足場の悪い岩場の上で不安定な体制でたたくので初め(左側)はかなりいびつになった。しかし徐々に慣れてきて、右側のはまあ納得できる仕上がり。
後日モータ側プーリーの穴を旋盤でΦ5に拡大してから、フランジの”かしめ”作業を行う。前回は岩場で作業したが、ちょっと作業しにくかったので今度は堤防の上で作業する。20mほどの距離に民家があり、迷惑かな?とも思ったが、前回作業を行った時それほど大きな音がしなかったので、まあいいやと・・・。
大橋を眺めながらの作業。やっぱ目の高さで作業できるのはやりやすい。
そして完成したプーリー。うまくできた。
取り付け金具も完成したので取り付けてみる。
赤緯600倍速動作
赤経600倍速動作
う~ん、思った以上の速さだ。正直300倍速程度でも良かったのだが、まあ早いにこしたことはない。
モータ取り付け金具は適当に作ったのだが、実際取り付けてみると思った以上にかっこいい。それゆえ、端面のやすりの後などが返って気になった。そういうわけで、金具の仕上げに本腰を入れる。定盤(御影石)に布やすりを敷いて表面や端面を削っていく。
きれいに削るとL字金具の安もの感は消えて美しい仕上がりとなった。当初は白スプレーでもしようと思っていたが、その金属光沢があまりにも美しく、新たにクリアスプレーを購入した。
かっこいい仕上がりだ。
望遠鏡取り付け座面の出っ張りも切り取り、アリミゾを取り付け。
さて、順調に改修が進んでいるので調子に乗ってウェイトシャフトにも手をつける。今使えるのはNP赤道儀用のねじねじウェイトシャフト。望遠鏡設置時は重いウェイトをワンタッチで取り外し可能にしたい。しかも低予算で(笑。
以前ホームセンターをうろうろしていた時に、結構立派なΦ16のシャフトが目に付いた。こういうやつ。300円くらい。
こいつを我がSP赤道儀のウェイトシャフトにと考えた訳だ。適当な長さでカットして、端にネジを切る。
次にウェイとストッパーを製作。M12のボルトを旋盤で加工し、ネジ部をM8に加工。
ホームセンターで購入したダイスセットで人生初の雄ネジ切り。こいつがウェイトストッパーとなる。
そしてウェイトの穴をΦ16に拡大する。Φ16のドリルは持っていないので、面取りカッターで穴をあける。
最後、シャフトを旋盤にくわえ、回しながら耐水ペーパで磨く。下写真は右半分が磨いた状態。
さらに丁寧に磨いていく。
NP赤道儀のねじねじシャフトと並べてみると、その美しさ(と低価格)に感動する。問題はこの美しさが腐食などによりどのくらいで損なわれるかだが、まあその時はまた作ればいい。数百円だ。
※後日談(2017年4月):ウェイトシャフトは2~3ヶ月に一度、潤滑材をつけたティッシュで拭いておけば錆びたりはしない模様。
※後日談(2017年8月):夏場部屋の窓をあけっぱなしだったので、表面にさびさびが発生。しかし旋盤でまた磨きなおしてピカピカに。20分くらいで磨けるのでたいして手間ではない。
これで一通り完成・・・のはずだが、なんか気に食わない。
取り付けボルト部分とネジ部が購入当時の安物っぽい黄銅色が残っている。ここまでがんばったんだからもう少しがんばれ。ということでステンレスのナットを購入。こいつだけでシャフトとほぼ同じ金額(笑。
そしてネジ部が隠れるように内グリする。
旋盤を持っているとこういう小技が使えるのがいいね。
完成したシャフト部の拡大。左が改造前、右が改造後。
すごく上品になった。満足だ。