■2022年6月
エンジンを組む上でトルクレンチは必須だ! ということでOH時には300Nmのプレート型を購入した。150Nmくらいので十分そうだったけど、金額の安い順に検索していたら300Nmのが出てきたので「大は小を兼ねる」とばかり購入した。トルクレンチは中学の図画工作の時間でプレート型を使った記憶があり、仕組み的にも単純で故障もしなさそうということでプレート型を選択した。しかし実際使っていくと20~30Nmの小さなトルク締めも結構あり300Nmではレンジが大きすぎる。またエンジン単体での使用ならあまり問題にならなかったが、車をいじるとなると長いレバー部があちこちと干渉するし、目盛りを読むのが難しい角度での作業が多い。
そういう理由からもう少し小さくて目盛りを見る必要のない感応型トルクレンチのニーズが高まったのだ。カチッって音がするのを感応型って言うと思ってたがネットで検索しても”感応型”という言葉はあまり見当たらない。プリセット型というのが一般的らしいが、締めていくと手ごたえで締まったかわかるので個人的には感応型という呼び名のほうがしっくりくる。
TopManのトルクレンチの内部構造を観察してレバー部が円柱状のタイプは耐久性に難があるのではと考えた(後にこれはただの偏見だったと告白)。名のあるメーカーのはレバー部の真ん中くらいまで楕円形状のが多いので、とにかくそういう形状のもので安く出品されているものを手あたり次第入札した。できれば100Nmくらいまで、最低でも50Nmくらいのレンジのが欲しかった。手あたり次第入札した結果下写真のトルクレンチを入手した(漱石さん一人+送料)。 六角レンチは手持ちの物。
LTC-750IというUSA製。USA製だとバッタ物ではないだろうとの安心感もあった。
ネット検索で情報が見つかる。100ドル以上の製品なのでとりあえずいい品だろう。
オークションの表示ではレンジは17~85Nm。うんうん要求仕様は満たしている。
さて、届いたトルクレンチを手に取って「はてな?」 これどうやって設定トルクを調整するの? レバー部が回るんかと思っていたがまったくそんな素振りもない。レバーのテール部を見ると六角レンチが2種類刺さる穴がある。「あれ・・・、これってもしかして単能型?」
もう一度ネット情報を検索したら下写真の工具が出てきた。ああ、なるほど。これで設定トルクを調整するのね。つまり単能型。 がっくし (*´Д`)。
もう入手しちゃったんだからしかたない。とりあえず他の部分も見てみる。先端のアダプタは13mmのものが付いている。先端の穴にキリみたいなものを差し込んで内部のピンを押すとアダプタが横にスライドして外れる。
内部構造も確認しなければね。グリップのゴムを切り取らないとバネ部の部品が取り外せないのでカッターで切り取る。
内部構造はこんな感じ。まあシンプルなつくりだな。教科書に描かれている代表的構造だと思う。
トルク印加時の力を受け持つのは大きなボールベアリング1個。アーム部本体は鉄製なので接触部は簡単には凹まないと思うけど、それでも点接触の機構は耐久性にちょっと不安がある。
レバー部の構造をまじまじと確認。
グリスを拭き取っていろいろ見る。ふんふん。なるほど。
まあ構造がシンプルなのでメンテとかはしやすそう。でもフルレンジで使うのは避けたほうが良さそう。
バネ力調整用のネジは2個(片方はロック用)。このネジを簡単に調整できる機構を作ればプリセット型になるので改造しよう。
太いボルトから加工してトルク調整部を加工する。
ギザギザの加工を金ノコでちまちま成型。
中心にM5のタップを切りバネ調整ネジと合体させる。はじめは調整ネジ部に穴を2個あけてピンを差し込んでまわり止めにしようとしたんだけど、調整ネジの材質が固すぎてドリルでは歯が立たない。結局ポンチでいっぱい凹みを作って滑り止めにしている。もともとついていたギザギザワッシャも間に挟んで滑りにくくしている。この構造だとロックができないが、そんな簡単にはずれないと思うし使う都度確認すれば問題ないだろう。
取り付けてみると結構いい感じの仕上がり。くるくる回していけば設定トルクを調整できる。
ちょっと全長が長くなったけど、まあよしとしよう。
このトルクレンチは13mmのアダプタが付いていたので、13mmを9.5sqに変換するアダプタを購入。TONEのだ。
こんな感じだ。すっきりしててかっこいいぞ。トルクレンチにはラチェット機構は特に必要ないと思っているので、こういうシンプルな作りの方が狭い所とかで作業しやすいと思う。
さてトルクレンチの校正だ。水タンクと鉄製おもりを使って校正していく。
13mmの長ナットを万力で固定して締め付けボルトを模擬し、レバー部にタンクをつるして少しずつ水を入れ、印加トルクを上げていきカチッっと動作したトルク(重さ)を記録していく。
20Nm以上はおもりの重さが足らないので、鉄管での延長レバーを使用。50Nmを越えると音が濁ってくる。安心して使えるのは50Nmまでと判断した。一般的にプリセット型トルクレンチは常用的に使うのはフルレンジの80%あたりまでと言われている。このトルクレンジは85Nmなので、50Nmだと60%あたりなのでまだ余裕はありそうだけど、末永く使うという意志も込めて使用レンジは50Nmとした。
※追記:名の知れたメーカー製のは内部構造自体が考えられているのでフルレンジでも十分OKだと思う。
そしてグラフにプロット。作動ライン(緑色)は ”えいやっ!” で引いた。
そしてこのグラフに従い目盛りシールを作成して完成。
我が家のトルクレンチ勢ぞろい。できれば100Nmまでのプリセット型もほしいのだが、収納場所もなくなってきたことだしこのへんで満足すべきか? ホイールナット締付用に100Nmの単能型を自動車に積んでおくという選択肢が残されているので、ちょうどいい品が見つかれば入札はするけどね。
新しい工具を入手したら、まずその置き場を作らなければならない。これは最近学んだ真理だ。収納場所はかなり手狭になってきたので、2階建て方式で収納を作る。スポンジフロアをカットして先端とレバー部を置ける台をつくる。
収納状態。ちょっとぎゅうぎゅうだけど場所が決まっていると使う時のレスポンスが圧倒的に早い。というか場所を体が覚える。
トルクレンチは収納時はバネをフリーの状態(設定トルクゼロ)にして収納する。
レンチ収納の引き出しを引くとこういう光景。よしよし、見ているだけで幸せになれるわ。サビているメガネレンチをいつかメッキ処理したいと思っている。