5-2.旋盤:クロススライドテーブルの送りネジをM8に改造
■2019年9月
久しぶりの旋盤の話。クロススライドテーブルの送りネジを改造する。今の送りネジは3/8のネジ(ピッチ1.58mm)が使われている。この送りネジのガタ(バックラッシ)が相当大きくなっており、作り直すのだ。といっても3/8のタップは持っていないのでM8にする(ピッチ1.25mm)。この加工を始めたのは2月頃なので、完成まで半年以上もかかった。現状の送りネジでも一応使えるし、あまり必要に迫らているわけではないので、ものすごいスローペースでしか作業が進まなかった。
少し前に作った垂直架台を使う。この垂直架台のおかげフライス加工っぽいこともできるようになった。
真鍮の円柱を加工して送りネジ部を削り出す。
ネジ部にはバックラッシ抑制機構を実装した。スペースと加工技術の関係で、シンプルな形状を考えた。送りネジ部を2段構造で作り、この間に紙などを挟んで調整すればバックラッシを減らせるという考え。
2段目はM2ボルト4本で固定するようにしている。
2段目送り部の穴あけと端面切削。
そして垂直架台で側面をミーリングしていく。
側面の切削完了。
1段目と2段目の接続部はこのようになっている。今後摩耗してバックラッシが大きくなっても、この間に紙を挟むことでバックラッシを調整できる(はず)。
残りの面も切削して送りネジ部は完成。
次に送りネジ側の加工。送りネジはステンレスをチョイス。まずは電動ドリルで掴んで、ダイスを往復させてネジ山の粗を削る。
そしてコンパウンドを塗り、ダブルナットで軽く締めた状態で往復させ、ネジ山をラッピングする。
ラッピング終了。真っ黒になったけど、これは金属粉。拭き取ったらピカピカ。
ネジ山部を拡大撮影。側面はなんか凸凹だね。でも摺動面は綺麗になった。
一通りの部品ができたので旋盤を分解する。今までのとこれからの送りネジを並べて記念撮影。
ちょっと気分転換でベランダからわずかに見える海を撮影。もう一階上層階だと海が良く見えるんだけどねぇ (*´ω`*)。
この機会にクロススライドテーブルにもワイパーをつける。細かい切子が摺動面に入り込みすぐに動きが硬くなるので、なんとかしたいと思っていた。往復テーブルにはワイパーをつけていたんだけど、クロススライドテーブル側は手が回っていなかった。側面の二か所にM2タップを切る。写真のタップ保持具を作ってからはタップ失敗しなくなった('ω')ノ。それでも鉄にM2タップを切ったのは初めてなのでかなり慎重に作業。下穴は規格上はΦ1.6mmだけど、安全を見てΦ1.7mmであけた。鉄の場合はこれくらいがタップを折りにくくていいと思う。
またスラストベアリングやネジ山に切子が入りにくいようにカバーをつける。
このカバーをつけるには、スライドテーブルに逃げ部が必要。この作業はちょっと騒音が大きく近所迷惑なので、できるだけ短時間で終わるようにした(マンションの皆様、ごめんなさい)。
ドリルで粗穴をあけて砥石で削る。ちょっと削りすぎたかな。
それでは組み上げていこう。
新しい送りネジ部を取り付け組み上げたんだけど、クロススライドテーブルが端までちゃんと動かない。もう一度ばらして確認すると、送りネジがテーブルに対して少し傾いている。写真では右側が少し上がっている。
紙を4枚重ねたものを挟んで調整。これで送りネジとテーブルが平行になった。
こんどは端から端までうまく動く。
ワイパー部はシリコン製の台所用品(100均)を切って使う。
スラストベアリングのカバー。こいつはベアリングだけでなく、ネジ部もカバーするようにし、切子から守る。
他のパーツも組み上げて完成。
送りネジの目盛も作り直した。今度はM8なので一回転で2.5mmになる。
バックラッシは劇的に減った。送り目盛で0.1mm分(ネジ方向で0.05mm)くらいしかガタがない。今まではハンドル1/3回転くらいのガタはあったので劇的に改善された。動きもとてもスムーズになった。無意味に送りハンドルをくるくる回して”にまにま”する日がしばらく続いた。