O型のまこさん

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趣味でいろいろ作った備忘録

4-5.R-1000の大径斜鏡への対応改造

4-5.R-1000の大径斜鏡への対応改造
■2017年4月

  R-1000はオートガイド撮影時に共振と思われる現象が発生したのでしばらくお休みしていた。私は長いドローチューブ根元あたりがあやしいと思っている。
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また、斜鏡が小さく(短径Φ25mm)、中央付近の小さな範囲しか主鏡全面の像を受光できないことにもどかしさを感じていた。以前に撮影した亜鈴星雲では下の写真で示した範囲しか主鏡全面の光を集光していない。
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  眼視用ならそれでいいのだろうが、写真撮影用に使うのでこれは許せない。R-1000の光路図を下記に示す。緑ラインがカメラセンサ短辺、青が対角辺を示し、赤ラインがΦ25の斜鏡に反射してセンサ面へ導光される光路ラインとなる。センサ面ではカメラセンサ短辺の1/4程度しか集光できていないことがわかる。
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これらの問題を改善する策として下記を実施
  ①ドローチューブからR-100Sの斜鏡部に変更(斜鏡短径Φ25 → Φ46.5)
  ②鏡筒を66mm延長し主鏡位置を後方に移動(斜鏡位置を焦点方向に移動)
これにより主鏡全面の像をカメラセンサ全面に写すことができる。R-100Sの斜鏡セット(下写真)をR-1000と共用扱いにするのだ。また長いドローチューブによる強度不足も改善することを期待している。

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ちょっと斜鏡径が必要以上に大きくなるがまあ気にしない。
  そうと決まれば鏡筒の改造作業にとりかかる。まず斜鏡部の取り付けのため、従来のドローチューブ用の丸穴をR-100Sと同じ四角穴に加工。

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そして斜鏡をとりつけピントの位置を確認する。主鏡を移動可能なように画用紙でドローチューブ風に鏡筒に取り付け、鏡筒延長量を確認。結局66mm延長することにした。
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次に鏡筒延長のための材料の調達である。
鏡筒は厚さ0.5mmの鉄板なので、同じような板を探しにホームセンターへ。しかし適当なものが見つからない。ちょっと見方を変えて探し直し、下記バケツを2つ購入。
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安上がりだったしね(2銀貨)。このバケツをちょきちょき切っていくと扇形になる。そこから必要とする長方形を切り出す。
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それを旋盤の主軸用に購入している鉄材で丸く癖をつける。
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長方形を二枚使いボルトナットで取り付け。これで形にはなった。
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でもちょっとボルトナットだけでは強度的に不安だったので、ハンダ付けする。
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バーナーでのハンダ付けはあまりうまくいかない。バケツ部材にはよくなじむが、鏡筒部分にはなじみにくいようだ。でもまあなんとかきたないけどハンダ付け完了。
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そして残ったバケツの底。こいつを眺めてから風呂でゆっくり考えを巡らせていると、いいアイディアが浮かんだ。遮光環を(ちょっと)兼ねた鏡筒補強リブとする。ビクセンのスライド式斜鏡は個人的には非常に気に入っているのだが、鏡筒開口部の強度が弱くなる弱点を痛感している。ここの補強にこの”バケツの底”リブを使うのだ。
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はさみでちょきちょき切るが先端部が邪魔でうまく切れない。先端部さえなければ・・・。  はっ!   じゃまなら切ってしまえば?    ということでちょんぎりました。どうせ百均、失うものは極わずか(笑。
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これが大正解。スムーズにちょきちょき切れる。
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2つの遮光環を(ちょっと)兼ねた補強リブの切り抜き完了。右端の切り残しの円板は主鏡の爪隠しに使おう。R-100Sでは海苔の入れ物で作った。それは薄くて二枚接着して強度を確保したが、バケツの底は厚さ的にも程よく(0.4mm)、一枚でいける。
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斜鏡取り付け部の前後に補強リブをハンダ付け。このハンダ付けもあまりうまくできなかったが、とりあえず固定はできている。鏡筒開口部を両手でぐいぐい押してみると、相当強度が上がっているのが実感できる。
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鏡筒内側はつや消しスプレーで塗る。補強リブ周辺は遮光環っぽく光を遮っているが、鏡筒内側は盛大に迷光を発生させているようだ。オリジナルの鏡筒内塗装はもう少しましだったが、今回塗ったてきとーつや消し黒は反射が結構増えたように思う。近い将来植毛紙を貼りたい。
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鏡筒外側を白でスプレー。やっぱ望遠鏡は白黒だよね~。
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鏡筒は白、鏡筒前後の輪っかはつやあり黒。右端の円環は主鏡の爪隠しでつや消し黒で塗装。
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鏡筒の延長加工が完了したところで重量測定。1.62kg→1.9kgの275gの重量増。
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主鏡の爪隠し作業も実施。ゴム脚の爪部が長くて星象を悪化させるので、カッターでぎりぎりまで切断。そしてゴム脚の側面に両面テープを貼り、主鏡の保持は主に両面テープで担ってもらう。うっかり主鏡脱落という事態を回避するためにも爪隠しの円環が活躍するはず。
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全体を組み上げ正面からパシャ。爪は完全に見えなくなっている。
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全体を組み上げ記念撮影。やっぱり望遠鏡は白黒だな(念押し。
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補強リブもなかなか精悍な面構え。
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カメラを取り付けてみる。改造前の長いドローチューブに比べしっかりとした構造になったと思う。
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最後に現在所有の望遠鏡の勢ぞろい写真。全部白黒。部屋とのカラーマッチング的に見ても望遠鏡は白黒一択(しつこい!。
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赤道儀に搭載される重さは5.8kg。R-100Sより1kgほど重い。SP赤道儀に載せるにはもはやぎりぎりだな。いや超えているのでは? SPの積載重量はたしか5kg。
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以上でR-1000の改造は終了。これまで変な共振で撮影がうまくいかなかったのがどまで改善されているだろうか。長いドローチューブを廃し、斜鏡部周辺をリブで補強、さらに斜鏡のサイズアップで主鏡全面の像をセンサ面で捉えることができるようになった。しかし春の空は霞んでいてなかなか撮影天気になりませんね。
 しばらく我慢強く待ち続け、星空指数で100%の晩がやってきましたよ。
いそいそと望遠鏡をベランダに設置。白く塗ったからかR-100Sに慣れてしまったからか、はたまた鏡筒延長したからか、鏡筒が異様に長く感じる。
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まず、問題となっていた鏡筒振動の有無を確認。
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      日時:2017年4月22日 / 月齢25日 /  空透明度70% / 気温9℃ / 撮影場所:西南ベランダ
      撮影内容:PM確認 / フィルター:LPR-N2 / 鏡筒回転角:不明 / 中央部をトリミング
      撮影:EOSkissD(IR改) / R-1000改(D=100mm f=1000mm) / 露光:1200sec / ISO:400

  これを見る限り振動していないようだ。以前はx2バロー(f=2000mm)での評価であったため、今回のバローなし(f=1000mm)とは単純に比較はできないが、おそらく大丈夫だろう。
  次に星象を確認してみる。適当な一等星っぽい星に照準を合わせパシリ。

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      日時:2017年4月22日 / 月齢25日 /  空透明度70% / 気温9℃ / 撮影場所:西南ベランダ
      撮影内容:星象確認 / フィルター:LPR-N2 / 鏡筒回転角:不明 / コンポジットなし
      撮影:EOSkissD(IR改) / R-1000改(D=100mm f=1000mm) / 露光:720sec / ISO:800
 
  なんかL字の斜鏡の影が盛大に出ている。光害カットフィルタに反射したゴーストか な。こんな盛大なゴーストは初めてだ。x2バローをつけると消えてくれるとうれしいんだけど・・・。星象自体はまあまあ綺麗だけど、水平から20°ほど傾いた影が気になる。なんだこれ? 確認のため主鏡を見てみる。

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  原因はメッキの劣化だね。これは主鏡の角度をちょっと変えてスパイダーの裏側にくるようにしてやれば目立たなくなるはず。
  今回の改造の出来は85点くらい。でも数枚撮影した結果(しし座三つ子銀河とM101を撮影)から、なんとなく本鏡筒(本システム、いやベランダ撮影のかな)の限界も見えてきた気がする。焦点距離がちょっと長くなるだけで要求される仕様がずいぶん上がるように感じるね

  翌日、翌々日は星空指数100%でしし座の三つ子銀河を撮影。ちょっと限界を感じ、すぐに植毛紙を発注。こいつは粘着シールタイプでないため、どのように鏡筒内側に貼り付けるか検討。両面テープでもいいのだが、接着剤で綺麗に貼りたいものだ。我が家にある接着剤で事前評価。木工ボンドと万能ボンド、バスコーク対決。
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バケツの切れ端に塗ってみる。木工ボンドはちょっとはじかれている。
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そこにダイソー植毛紙(書道用下敷き)の切れ端を貼り付ける。
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数時間後にぺりぺり剥がす。
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木工ボンドは接着力は弱いが一応張り付いている。ポストイットよりは強く張り付く感じ。そして剥がす時は下板に跡が残らない。万能ボンドやバスコークは接着力は強いが剥がすのは大変そう。
特に気に入ったのが木工ボンド。接着時は粘着力が弱いので張り直しや位置ずらしも簡単そうだし、剥がすのも楽だ。逆に万能ボンドやバスコークは剥がすのは不可能になるだろう。そういうわけで木工ボンドでチャレンジしてみる。

数日して植毛紙が届いた。たしかに真っ黒だ。
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植毛紙ってなんとなく黒い布だと思っていたが、紙に黒い毛を植えているようだ。あっ、だから植毛紙か!
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どれくらい鏡筒内反射を抑制できるのかテスト。鏡筒内に植毛紙と習字下敷きの小片を置いて撮影。
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たしかに反射はしない。習字下敷きも健闘しているがやはり本物の植毛紙が格上。
  さて、この植毛紙を鏡筒内にうまく貼り付けるにはどうすればいいだろう。鏡筒は内径Φ140mmで奥の方には手が届きにくい。やはり道具の整備からだ、ということで下記の道具を用意。接着剤塗布棒は今回のため自作。
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リビングテーブルの上で植毛紙をカット。
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そしてくるくる巻き取り棒に巻きつけ、植毛紙の端に端固定棒を両面テープで貼り付ける。
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いざ本番。まず鏡筒内に木工ボンドをたらし、
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接着剤塗布棒で伸ばす。
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植毛紙を上側に吊るし、巻き取り棒を回転させて植毛紙の端を接着位置に固定。
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端固定棒でスタート位置が直線的に貼り付けられるので、ここから手を入れて鏡筒内にしわなく貼り付けていく。植毛紙の有無での内面反射の違いがよくわかる。
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そして植毛紙を端によせ、また木工ボンドを塗る。
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これを繰り返し一周貼り付ける。
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あれ?なんか植毛紙が10cmほど余ってる。なんか初歩的な引き算ミスがあったもよう。こんどは植毛紙に直接木工ボンドを塗り手で伸ばした。植毛紙の終端には両面テープを貼っているのでフィニッシュは両面テープとなる。
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前方のリブ(少しだけ遮光環)の部分は両面テープで貼る。
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全面植毛紙貼り付け完了。
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鏡筒の前端カバーの内側にも植毛紙を貼る。これをすると全面のふたが閉められなくなるが仕方がない。
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さて、植毛紙の効果はいかに?
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BeforeAfterの違いは劇的だ。なんか相当すばらしい。
これで完璧。やっと本物の光学機器になったと思えた(大げさ。
さて、主鏡、斜鏡を取り付けR-1000の復活だ。
斜鏡口から真っ黒になった鏡筒内を記念撮影。・・・?あれ、なんか主鏡の周りがなんか明るい。じーっとみると、ああ、主鏡台座が結構光ってる。調整用ネジの頭なんかぴかぴかに光ってる。
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主鏡をはずし、つや消し塗装。
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そして爪隠しにも植毛紙を貼る。
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再び組みなおし確認。
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よーし、完璧だ!

・・・・
なんかちょっとだけどこかから光を感じる。主鏡あたりにピントを合わしているとわからなかったが、目の前の鏡筒壁面がなんかつやつやぴかぴかしている。
ああ、補強リブのエッジに反射している。
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細い植毛紙を貼ってみるがあまりうまくいかない。
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まあ、今日はこのへんでかんべんしてやるか!